第43回バジェナート伝説フェスティバル・プロ部門にエントリーしているアコーディオン奏者たちの続き

 第43回バジェナート伝説フェスティバル・プロ部門にエントリーしているアコーディオン奏者たちの続きです。最近はラテン音楽の紹介というよりはバジェナートの紹介みたいになってしまいますが、この時期なのでしかたありません。

・ エベル・パテルニナ(Ever Paternina)
 キリ・サンタナの相棒です。個人的にマヌエル・ベガでなければこの人だと思います。


・ フェルナンド・ランヘル(Fernando Rangel)
 この人は最近の私のお気に入りです。勝ってほしい気持ちはあるので、押しておきますが、さてどこまで行くか。


・ フリアン・モヒカ(Julian Mojica)
 この人はボヤカの人ですね。バジェナートはすでにコスタだけの音楽ではありませんが、ミュージシャンのほとんどは北東部三県(セサル、ラ・グアヒーラ、マグダレナ)出身者に限られています。いずれにせよ、ボヤカというとバンブーコの本場ですから、めずらしい。このビデオの歌手はシルベストレ・ダンゴン。


・ ギジェルモ・オルティス(Guillermo Ortiz)
 この人は去年のアマチュア部門の王者で、歌詞からするとウラバー(アンティオキア県)の人ですね。ロス・ヒガンテス・デル・バジェナートのカルデロン兄弟がウラバー出身じゃなかったけ? ウラバーというとブジェレンゲが盛んという以前にパラの本場で、パラ、ゲリラ、避難民とひたすら治安が悪いというイメージですが(すみません、でもニュースだけじゃなくて実際にひどいめにあった人も知っているので・・・)、いずれにせよめずらしい。


・ アルメス・グラナードス(Almes Granados)
 ウーゴ・カルロスのおじさんです。オビディオ、メモの弟でフアン・カルロスのおじさんでもあり、要するにバジェナートの名門出身者ですね。


・ グスタボ・オソリオ(Gustavo Osorio)


・ サビエル・カメレル(Xavier Kammerer)

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 おまけ。バジェナートで使うアコーディオンは蛇腹(じゃばら)を伸ばすときと縮めるときで違う音がでる「押引異音式」、ダイアトニック式です。黎明期のアコーディオンは、みなダイアトニック式でしたが、ダイアトニック式は、演奏できるキーが限られているうえ、演奏が難しいので、蛇腹の押し引きに関わらず同じ音程で演奏できる、より演奏のやさしい「押引同音式」のクロマティック・アコーディオンに進化していったとされていますが*1。ただ、ダイアトニック式は、クロマティック式に比べて、蛇腹の押し引きでメリハリをつけることによって、リズミカルな演奏ができるので、バジェナート、テックスメックスケイジャンアイルランド音楽など、民族音楽や大衆音楽にはよく使われます。
 このビデオではアレックス・フローレスが内部を分解してくれるので構造がよくわかります。要するにハーモニカが中にたくさん入っているということですね。

 アコーディオンはドイツのホーナーという会社で作っていますが、元の楽器ではバジェナートで使うキーがすべてそろわないので、コロンビアで適宜改造しています。

 私の知る限り、バジェナートのアコーディオン奏者ほどこの楽器のポテンシャルを引き出している人たちはいないと思うのですが(だから他のジャンルでこの楽器を使っているのを聞くと物足りなく聞こえる)、ホーナーの職人さんは、ジャーナリストとのエルネスト・マカウスランドにビデオをみせられるまで、自分たちの作った楽器がコロンビアでどう演奏されているのか知らなかったようです。最初はみなさんコーチャ・モリーナなの演奏*2に「なんじゃこりゃ」って感じで固くなっていますが、最後は楽しんでいただけたようです。職人さんもこれだけ弾いてもらえれば作りがいがありますね。

*1:http://www.ikebe-gakki.com/web-ikebe/kbd_Ludovic-Beier_interview/index.html なおバジェナートでクロマティック式を使っためずらしい曲としては、ホルヘ・セレドン&ジミー・サンブラーノの“Esta Vida”があります。

*2:1999年のバランキージャのカーニバルの映像です。ちなみにこれボクみているんですよ。