El errante / Lorenzo Morales ‘Moralito’[1914-2011]

Tengo que vivir errante en la vida   おれはさすらいの人生をおくらなきゃならねえ
por tu amor que me ha causado demencia   なぜっておまえへの愛がおれを狂気に駆り立てたからさ


Que es que el corazon me titila   おれの心臓は今でもビクビク動いているのさ
yo sé que la criminal es la ausencia   おれにはわかる 不在にしていることが罪なんだって


Yo me he cansado de esperarte mi amor    もう待ちつかれちまったよ
Y no sé que no quieres conmigo     何でおまえがおれといっしょにいたくないのかわからねえ

 今年の伝説フェスティバルの主人公のひとり、というよりはカルロス・ビベスの“La gota fría”で歌われる1938年にラ・グアヒーラ県ウルミタ市で行われた伝説のピケリア*1の敗者といったほうがはるかに有名でしょう。ロレンソ・モラレスが、今日(コロンビアでは26日)、バジェドゥパルの病院にて97歳で亡くなりました。

'Moralito' se fue de mañanita って・・・この見出しは“La gota fría”のもじりです。負けた歌でいつまでも紹介されるのはかわいそうな気がしますが。

 娘さんが若いのにびっくりです。30人以上子ども作った人ですからね・・・
 
 いずれにせよ、アコーディオンを担いだ放浪楽師(フグラール)時代のバジェナートを身をもって知る人は、あとはレアンドロ・ディアスぐらいになってしまいました。思い起こせば、私がこの音楽に魅せられた頃は、アレホ・ドゥランもエミリアーノ・スレータもコラーチョ・メンドーサも健在だったわけで、時間が経てば当然とはいえ、ほんとうに寂しいですね。


 一時はピケリアの敗北で引きこもりになったモラリートも*2、その後バジェナーテーロとして復活、仇敵だったエミリアーノとも親交をむすび、両者は兄弟仁義を交わすことになりました。http://bit.ly/kC0TXm*3
 そして、“Cuando uno de los dos muriera el otro deja de tocar(どちらかが死んだら残った者は二度とアコーディオンを弾かない)”という“el pacto de caballero(男の誓い)”を守り、2005年にエミリアーノ・スレータが亡くなってから、二度とアコーディオンに触れなかったモラリート。今ごろ天国でエミリアーノと再びピケリアを闘っていることでしょう。

 彼の生地であるセサル県グアコチェで“El errante”を演奏する少年。こうやって彼の曲も歌い継がれていくのでしょうね。

*1:複数の歌手ないし演奏者が即興でメロディや歌を繰り出しながら競い合うこと。カリブの音楽に広く見られるスタイルだが、「ピケリア」は私の知る限りコロンビア独特の呼び名で特にバジェナートのものが有名。

*2:ピケリアの敗北そのものというよりも、その後“La gota fría”が流行ったことに嫌気がさして、音楽活動を断念して山にこもって農民をしていたということのようです。

*3:以前は手抜き翻訳だった“La gota fría”を気合い入れて訳しました。この歌の翻訳はかなり難しいけど、そこそこ自信ありますよ!