Los Sabores del Porro / Porro Sabrosiao / El buey

 ポロ(porro)はコロンビア・カリブ海沿岸地方の伝統音楽で、その名前はアフリカ由来の太鼓“porrito”またはその叩き方“porrazo”が起源とされています。ポロもクンビアと同様、アフロ系の文化と先住民系の文化、さらにヨーロッパ音楽の影響が混じってできたことはまちがいないようですが、その発祥地については、サンマルコス・デ・カラテ(スクレ県)、シエナガ・デ・オロ(コルドバ県)、エル・カルメン・デ・ボリバルボリバル県)等々、みなさん「わが町こそ」といっていますが定まっていません。伝統的なステップは地面を擦るすり足で、この音楽がクンビアと深い関係にあることがうかがえます(後に述べるとおり、私はこの2つのジャンルに実質的な違いはないのではないかと考えています)。

Mi porro me sabe a todo   私のポロから味わうことができる
lo bueno de mi región    私の故郷のよいところすべてを
me sabe a caña,me sabe a toro   サトウキビの味 闘牛の味    
me sabe a fiesta, me sabe a ron   お祭りの味 ラムの味


Me sabe a piña me sabe a mango   パイナップルの味 マンゴーの味
me sabe a leche esperá en corrá   (なんかとれたての牛乳みたいです)
me sabe a china esparascá en fandango (なんか果物使った料理みたいです)
y ají con huevos en machucá   (なんか唐辛子と卵使った料理みたいです)

(パブロ・フローレスの作になる有名な曲ですが、これまで適当に聞き流していたツケで単語の意味がわかりません・・・たまたま近くにいたコロンビア人〔リサラルダ県ペレイラ市出身・38歳〕に聞いたけど、彼女も???です・・・)
 ポロ・ネグロ(porro negro)、ポロ・サンビオ(porro zambio)と呼ばれた原初のポロは、20世紀の初めにコルドバ県とスクレ県で、軍楽隊や消防隊のブラスバンドで演奏されるようになったことから*1、ヨーロッパ音楽の伝統が強く反映されるようになり、現在のポロに至ったとされています。
 スクレ県シンセレーホ市のポロ・フェスティバルです。

 ポロは“ポロ・パリティアオ(porro palitiao)”と“ポロ・タパオ(porro tapao)”に分類されることがあります。パリティアオは、太鼓をスティックで打つことからつけられた名前で、縦笛が入ったことから“ガイタ(gaita)”という名前でも知られています。タパオは太鼓の片側を叩きつつ反対側を手で押さえ音を消してアクセントをつけることに由来し、コルドバ、スクレ、ボリバルの草原地帯で演奏されたことから“サバネーロ(sabanero)”とも呼ばれています。ただ現在は、タパオといってもスティックで太鼓を叩くことがあり、縦笛も必ずしも入りません。また少なくとも現在は“ポロ・サバネーロ”と言えばコルドバやスクレで盛んな管楽器が入った編成をさすのが一般です。ですからこの区別も多分に歴史的・相対的、さらにいえば偶然的なものだと思います。
 このビデオはガイタです。

 これもガイタです。Gaitero de Ovejasという楽団ですからスクレ県の人たちですね。

 なお、クンビアとの関係ですが、「ポロがクンビアから生まれた」かのような説明(たとえばwikipediaスペイン語版のクンビアの項目など)については、何をもって「クンビア」とさすかにもよりますが、クンビアをアフロ系の舞曲の総称として用いるならたぶんそのとおりで、「現在、正調とされるクンビア」を前提にする限り、うのみにできないと思います。
 というのも、アフロ系の人々はコロンビアのカリブ海沿岸地方に広く住んでおり、どの集落で、どの音楽が先に生まれて、どう伝わったかという経緯が判明しているものでもありませんし、そもそも現在正調とされるクンビア、ポロ、さらにガイタと呼ばれる音楽が、複製メディアに記録される以前に*2、なんと呼ばれて、聞き手や演奏者にどう区別されていたのかもわかっていない(あるいは、わかっていなさそう)からです。
 なお、正調ポロについては、管楽器必須の音楽であることを前提に、その特徴を形式面(Danza→Desarrollo del porro→Nexo preparatorio→Bozá)から定義づける説明もあります*3。正調ポロ=ポロ・サバネーロを誇りにするコルドバの人がそういうのは理解できますが、原初のポロには管楽器はありませんでしたし、現在のポロもすべてこの形式で演奏されているものではありません。さらに混ぜっ返すようですが、バンド形式の導入によるヨーロッパ音楽の影響というのなら、程度の違いはあってもクンビアにもあります。
 現在一般に「クンビア」とされているものの中にはかなりの「ポロ」が含まれており*4、結局、両者の境界はあいまいで、歴史的に同族の音楽であること、「ブラスバンドで演奏して正調とされる現在のポロ」と「正調ではない(とされがちな)現在のクンビア」といったことぐらいしか、今の私にはいえません。
 アンティオキア県ネコクリ市です。このダンスはクンビアそのものに見えます。

 コルドバ県サンペラヨ市。国内最大のフェスティバルが行われているポロの本場中の本場です。

*1:特に有名なのはコルドバ県(1952年まではボリバル県)サンペラヨ市の楽団です。

*2:コロンビアでラジオ放送が始まったのは1929年、初めてクンビア(太鼓と笛の正調クンビアだったそうです)が録音されたのは1950年とされています。これに対して初めてバジェナートが録音されたのは1943年です。これだけ並べてみても、音源から何かを推測するというのには相当無理があるというのがわかると思います。

*3:たとえばGuillermo Valencia Salgado Goyo"の“Córdoba su Gente su Folclor”。コルドバ県文化部のHPで一部読めます。http://culturadecordoba.tripod.com/escritores/goyo_porro.html

*4:世間でクンビアと呼ばれるルーチョ・ベルムーデスやパチョ・ガラン、ペドロ・ラサらのレパートリーのかなりの部分は、クンビアとクレジットされていますが、ポロとしたほうが適切でしょう。特にペドロ・ラサはそうです。