La Piragua

Me contaron los abuelos que hace tiempo   おれのじいさんとばあさんが話してくれた
navegaba en el Cesar una piragua   昔々セサル川を行った一艘の小舟のことを
que partía de El Banco viejo puerto   その小舟はエル・バンコの古い港を出発して
a las playas de amor en Chimichagua   チミチャグアの愛の岸辺にそって進んだのだと


Capoteando el vendaval se estremecía   木の葉のように船を揺らす風と
e impasible desafiaba la tormenta   情け容赦なく挑みかかる嵐を切り抜けると
y un ejército de estrellas la seguía   星の兵士たちが小舟のあとを追い
tachonándola de luz y de leyenda   星の光と伝説で飾りたてた


Era la piragua de Guillermo Cubillos   それはギジェルモ・クビージョの小舟
Era la piragua, Era la piragua   ギジェルモ・クビージョのピラグア


Doce bogas con la piel color majagua   その小舟には褐色の肌の12人の漕ぎ手と
y con ellas el temible Pedro Albundía   おそるべきペドロ・アルブンディアがいた
Por las noches a los remos arrancaban   いつも夜になると櫂が
un melódico rugir de hermosa cumbia   美しいメロディのクンビアを奏ではじめた


Doce sombras ahora viejas ya no reman   今は年老いた12の面影が櫂を漕ぐことはもはやない
Ya no cruje el maderamen en el agua   船体をなす材木が水に音を立てることもない
Solo quedan los recuerdos en la arena   今はピラグアが横になって眠る
donde yace dormitando la piragua.   浜辺の記憶だけが残っている


Era la piragua de Guillermo Cubillos   それはギジェルモ・クビージョの小舟
Era la piragua, Era la piragua   ギジェルモ・クビージョのピラグア


 “La Piragua”の作曲者であるホセ・バロスのドキュメンタリーの一部ですが、1分30秒ぐらいから地元の中学生が、2分50秒ぐらいからトトー・ラ・モンポシーナがこの歌を歌います。イラストが出てくるので歌の雰囲気がわかると思います。船長のペドロ・アルブンディアは人相悪いです。このピラグアは「蟹工船」みたいだったのかもしれません。2分40秒頃に出てくるベレー帽のおじいさんが作曲者です。
 
 ホセ・バロスは、クンビアのみならず、バジェナート、パシージョ、ボレロからタンゴまで、多くの名曲を残したコロンビアを代表する作曲家のひとりですが(アグスティン・ララはホセ・バロスのことを「ラテンアメリカでもっとも偉大な作曲家」といったそうです。)、たぶん、1975年作のこの歌がいちばん有名です。ものすごくローカルなテーマについてとりあげた曲ですが、youtubeでは、コロンビアのミュージシャンはもちろん、他の国のアマチュアからフリエータ・ベネガスやジョニー・ベントゥーラまでジャンルを超えてラテンアメリカ全土で歌われているのをみることができます*1
 ホセ・バロスは2007年に92歳で亡くなりました。今はこの歌詞にもある生まれ故郷のマグダレナ県エル・バンコ市で、錨をおろしたピラグアとともに静かに眠っています。

*1:ただし、他国で歌われているものの中には、コロンビアで作られた歌詞の一部を改変しているものが目立ち、なかには、腰をクネクネするダンスと相性がよいせいか、すごくエッチな歌詞になっているものもあります(最悪なのがこれ→http://www.youtube.com/watch?v=TkM6IebhMBU)。このブログで取りあげた他の曲からもわかるとおり、コロンビアのクンビアには歌詞がすてきなものが多いです。名曲は、それを育んだ文化に敬意を表して、ぜひオリジナルの歌詞で楽しんいただきたいところです。