El Arco Iris

 今年のフェスがラファエル・エスカローナ追悼なので。エスカローナが2番目の妻のDina Luzのために書いた歌。
 歌手はイバン・ビジャソン、アコーディオンは伝説フェスティバル1990年の王、1997年の「王のなかの王」・コーチャ・モリーナ。

Píntame una golondrina y te diré  ツバメよ、ぼくに色を塗ってくれ そうしたらおまえにいおう
Si eres un buen pintor  おまえこそがすばらしい絵描きだと
Debe de tener en el pico una espina  おまえはきっとそのくちばしにはトゲをくわえ
Y en los ojos un dolor   ひとみには苦しみを宿しているのだろうね


Pues, dicen que cuando Cristo agonizaba  キリストが苦悶の表情を浮かべたとき
Llegó del occidente  西の空からツバメの一群がやってきて
Enjambre de errantes golondrinas a limpiarle la cara  その顔をきれいに洗い
Y a quitarle con sus picos las espinas  くちばしでトゲを取りのぞいたという
Clavadas en la frente  その額に突き刺さったトゲを


Y tú, y tú, y tú, ああ、愛しいきみよ
Tú eres mi golondrina Dina Luz  ディナ・ルス、きみはツバメ
Tú eres mi golondrina Dina Luz  ディナ・ルスよ、きみはツバメ
Tú eres mi golondrina  きみはぼくのツバメ


Cuentan que los arco iris y que nacen  人はいう 大雨のあとに
En la nevada frente a Valledupar  バジェドゥパルの目の前にそびえる雪山で生まれた虹は
Y después de un aguacero y que se esconden  パティジャル村の近くの草原に
En la sabana, cerquita e'Patillal  消えてゆき
Y después las golondrinas y que salen  その後ツバメがやってきて
Para que el sol las mire  太陽が彼らをながめると
Y después desaparecen en el aire,  大空に消えてゆくのだと
Como los arco iris  あたかも虹を追うかのように


Y tú, y tú, y tú, ああ、きみよ、愛しいひとよ
Tú eres mi golondrina Dina Luz  ディナ・ルス、きみはツバメ
Tú eres mi golondrina Dina Luz  ディナ・ルスよ、きみはツバメ
Tú eres mi golondrina  きみはぼくのツバメ

 このブログで紹介したエスカローナの作品。
・ El Testamento
http://d.hatena.ne.jp/Genichi_Yamaguchi/20091018/1255825238
・ El Chervolito 
http://d.hatena.ne.jp/Genichi_Yamaguchi/20091030/1256998781/
・ La Mariposa del Río Badillo
http://d.hatena.ne.jp/Genichi_Yamaguchi/20091107/1257543716
・ El Copete
http://d.hatena.ne.jp/Genichi_Yamaguchi/20091107/1257550441
・ La Vieja Sara
http://d.hatena.ne.jp/Genichi_Yamaguchi/20091115/1258252788

 ところで、今でこそコロンビアを代表する大衆音楽とされるバジェナートにも、90年代にカルロス・ビベスが成功を収めるまで、「田舎の下層階級の音楽」という偏見にさらされ続けてきた長い歴史がありました*1。実際もまあそうだったんですけど、他のラテン・アメリカの同種の音楽と比べると歌詞の美しさは際だってます。「早くやらせろ」みたいな直截な性的表現、「オレの○○○でおまえのあそこをメロメロにしてやる」みたいな性的能力の誇示、汚いスラング(フエ・プー○とか)聞いたことないですね*2

*1:石橋純さんは、それを歌手の声質、訛り、特有の節回し(語末のNを鼻にぬいて伸ばす)、愁嘆を表すかけ声(“フイー”とか“アイ・オンベ!”とか)、スポンサーや友人の名前を曲の合間に連呼する濃密な人間関係の発露、バジェナート地域特有の楽器であるアコーディオンの音色に代表される田舎者、下層民の美学、言語表現、身体性を包み隠さず表現する点に求めています(石橋純「熱帯の祭りと宴」p196)。確かに、サルサなどのカリブ音楽が好きな人でも「バジェナートはちょっと・・・」「悪くはないけどあえて買ってまでは・・・」という人は多いですね。

*2:まあ実際は殺人事件の被疑者になって何年も逃亡生活をしていたミュージシャンが一番えばっていたり、何年かごとに有名ミュージシャンが殺されたり、そもそも中心になる三県がパラミリタルとゲリラの敵対地域で有名ミュージシャンがパラのお座敷に呼ばれたりはしていますが。ただいうまでもなくバジェナートの本質は「芸能界」ではありません。