Soy Colombiano / El Sanjuanero / Ojo al toro

 コスタの音楽ばかり紹介しましたが(というより「わからない」ことの紹介みたいですが)、7月17日にはマリア・ムラータと並んでアンデス地方の音楽の演奏家ペドロ・ネル・マルティネスも出演するので、そちらの方面も整理してみます。


 アンデス山岳地方の音楽というと、まずあげられるのがバンブーコです。おそらくクンビアと並んでコロンビアを代表する音楽のひとつで、歌詞にも郷土や国への愛情がよく取りあげられます。
 この曲はトリマ県出身のラファエル・ゴドイの作になる“Soy Colombiano”、バンブーコのみならずクンビアからサルサまで、あらゆるジャンルで取りあげられている名曲で、これ歌えないコロンビア人はたぶんいません。昨日コロンビア人と酒飲んだんですが、最後はこれ歌ってアグアルディエンテ呑んでました。

A mí déme un aguardiente,   私にアグアルディエンテをくれ
un aguardiente de caña,   サトウキビのアグアルディエンテを
de las cañas de mis valles   私の谷のサトウキビの
y el anís de mis montañas.   私の山のアニスのアグアルディエンテを


No me den trago extranjero   外国の酒はいらない
que es caro y no sabe a bueno,   あれは高いし美味しくない
porque yo siempre quiero   私はいつだって
lo de mi tierra primero.   私の故郷の酒が欲しいのだ


Ay! que orgullosos me siento   ああ この故郷に生まれたこと
de haber nacido en mi pueblo.   それが私の誇り


A mi cantéme un bambuco   私にバンブーコを歌っておくれ
de esos que llegan al alma,   私の魂にとどくその歌を
cantos que ya me alegraban   私の母が歌うやいなや
cuando apenas decía mama.    私を喜ばせたあの歌を


Lo demas será bonito   他の歌もきっと美しいのだろう
pero el corazón no salta,  だがそれでは
como cuando a mí me cantan   コロンビアの歌を歌ってくれるときのようには
una canción colombiana.   心が躍らないのだ


Ay! que orgullosos me siento   ああ この故郷に生まれたこと
de haber nacido en mi pueblo.   それが私の誇り

 リズムは8分の6拍子または4分の3拍子ですが、4分の3拍子では独特な風味が失われてバンブーコではないという人もいます。演奏の仕方にもよると思いますが、確かに4分の3拍子ならバルスと同じで、聞いた感じはまったく異なりますよね。
 バンブーコという名称は、“baile de indio(インディオの踊り)”から来たとされ、この音楽の起源はトリマやカウカの先住民であるナサ(パエス)族*1、ピハオ族*2にあると説明されています。ただ、起源はともかく、トリマ・グランデと呼ばれるオリエンタル山脈とセントラル山脈にかけての山間部(現在のトリマ県、ウィラ県とカケタ県の一部)で発達したこの音楽(この地方では“サンファネーロ(sanjuanero)”とも呼ばれています。)については、スペイン系*3の影響が圧倒的に大きいといえるでしょう*4
 バンブーコは、アンティオキア、ボヤカ、カウカ、クンディナマルカ、ナリーニョ、サンタンデールなどに伝わり、コロンビアを代表する音楽としての地位を獲得しました。

 伝統的なバンブーコの踊りで、曲は“Ojo al toro”、トリマ出身でこのジャンルの有名な作曲家カンタリシオ・ロハスの作品です。

*1:http://es.wikipedia.org/wiki/Nasa

*2:http://es.wikipedia.org/wiki/Pijao

*3:とりわけバスク系だそうです。http://www.colombia.com/colombiainfo/folclorytradiciones/bailes/bambuco.asp

*4:なお複数の文献にはアフロ系起源を主張する説が紹介されていますが、少数説のようです。