Tonada El Congo

A la mar me llevan   あたしは海*1まで連れてこられた
sin tener razón   わけなんてあったもんじゃない
A la mar me llevan   あたしは海まで連れてこられた
sin tener razón   わけなんてあったもんじゃない


Dejando a mi madre   あんなにも愛しい
de mi corazón   母さんから離されて
Dejando a mi madre   あんなにも愛しい
de mi corazón   母さんから離されて


Ay Que dice el congo  コンゴがいったこと
Lo manda el congo   コンゴがそれをおくった
Lo manda el congo   コンゴがそれをおくった


Sucu Sum Mambé   スクスムマンベー*2 
Sucu Sucu Sum Mambé   スクスクスムマンベー  


No hay novedad   新しいことなんてありゃしない
No hay novedad   新しいことなんてありゃしない


Que el palo de la jeringa    ヘリンガ*3の棒は
derecho, derecho, va a su lugar   まっすぐ まっすぐ しかるべき場所へ


Sucu Sum Mambé   スクスムマンベー 
Sucu Sucu Sum Mambé   スクスクスムマンベー  

 スペインのナバラに生まれ、1764年、29歳のときにペルー副王領のリマ市に赴任したバルタサル・ハイメ・マルティネス・コンパニョンは、1778年にトゥルヒージョ市の司教に任じられます。彼は、1782年から1785年にかけて、自分の担当地域の社会を知るために、ペルー北部を旅しました。数年後、彼はヌエバグラナダ副王領・ボゴタ市に赴任するためこの地を離れるに際して、旅で記録した各地の建築、生活、習慣、音楽、舞踊、動植物の記録を9冊の書物にまとめ、1,411枚の水彩画とともに本国政府に送ります。現在“El Códice Trujillo del Perú”(ペルー・トゥルヒージョ写本)として知られるこの記録の第2巻には、“Tonada el Congo”を含む20の音楽が楽譜として収録されており、口承以外に知る術のないラテンアメリカ音楽のかつての姿をしるための重要な資料となっています。
 “Tonada”とはスペイン語で「歌」という意味で、チリやボリビアにはその種類の音楽がありますが、ここでは18世紀のスペインで人気のあった通奏低音を伴って歌われる声楽曲を指します。この時代の音楽を研究している音楽家アドリアン・ファン・デル・スプール(Adrian Rodriguez Van der Spoel)によるとこの曲の“Congo”はアフリカのコンゴのことで、大西洋をこえてアフリカからペルーに奴隷として連れてこられたアフロ系の人々が自らの運命を嘆いているのがこの曲の意味とのことです*4

 先日ペルー新政権の文化大臣に就任したスサーナ・バカのすばらしい演奏もCDに収録されています(ただすでに入手が難しいらしく、ちと高いのですが・・・)
http://es.filesmap.com/mp3/7Z3h/susana-baca-tonada-del-congo/

Del Fuego Y Del Agua

Del Fuego Y Del Agua

*1:“mar”はスペイン語では、フランス語と異なり、原則男性形で、抽象的に海を指す場合、漁業や海事用語などの成句の場合は女性形になる、とされていますが、この歌でどうして女性形“la mar”とされているのかは分かりません。とにかく古い歌ですから、単に「そう記録されている」という以上の理由はないのかも知れません。

*2:コンゴのおまじないの文句とのことです。

*3:私はアフロペルー音楽については詳しくないので当てになりませんが、サンテリアで使う木の種類だと思います。http://bit.ly/plmapb  こういうのを通販で買うリスクについては http://bit.ly/oz8Nye

*4:なお、現在のペルーでアフロ系は人口の1%以下とされていますが、アドリアン・ファン・デル・スプールによると当時のトゥルヒージョの人口は先住民50%、アフロ系40%、スペイン系10%だったとのこと。ペルーのアフロ系人口は太平洋戦争(1879年〜1884年)の人的被害で激減したとされています。