Mi pueblo natal / Jairo Varela [1949 – 2012]
A lo lejos se ve 遠くからみえる
mi pueblo natal ぼくの生まれた村
no veo la santa hora あの村にいる聖なる時間は
de estar allá 今のぼくには体験できない
Se vienen a mi mente bellos recuerdos 心のなかにわき上がる数々の美しい思い出
infancia alegre que yo nunca olvidaré 楽しかった子ども時代 ぼくはきっと忘れない
Luces de esperma en el fondo se divisan 部屋の奥にかすかにみえるろうそくの光
titilantes igual que estrellas en el cielo その揺れるさまは空にきらめく星のよう
y el ruido incesante del viejo trapiche 絶え間なくギュウギュウガタガタと音を立てる古いトラピチェ
sustento eterno de todos mis abuelos それがぼくのおじいちゃんとおばあちゃんが持っていた生活の糧
Ya vamos llegando さあ行こう
me estoy acercando 少しづつ少しづつと故郷に近づくにつれて
no puedo evitar que los ojos ぼくの目は
se me agüen あふれる涙でいっぱいだ
Tierra mía, pueblito donde nací ぼくの故郷 ぼくの生まれた町
Entre valles y montañas 谷と山々の間を流れる川は
ríos que surten tus mares おまえの海へ注がれて
y el cielo azul 青い空へと連なってゆく
que son patrimonio de mis cantares それがぼくの歌に宿る大事な財産
Ya vamos llegando さあ行こう
me estoy acercando 少しづつ少しづつと故郷に近づくにつれて
no puedo evitar que los ojos ぼくの目は
se me agüen あふれる涙でいっぱいだ
ハイロ・バレーラはコロンビア最貧県であるチョコー県の県庁所在地キブドーからさらに車で5時間ほどのところにあるドミンゴドー村で生まれました。その生涯で多くのヒット曲を残したハイロですが、故郷のチョコーをテーマにした曲はこの“Mi pueblo natal”のみとされています*1。ただ今年になって 'El amanecer de los pájaros'というタイトルでコロンビア太平洋岸の国内避難民をテーマに小説を書いていたそうです(私は未読)。
グルーポ・ニーチェはヒット曲の影響でカリの楽団として認知されていますし(ただ本拠はカリだが結成されたのはボゴタ)、皮肉や嫌みの多い偏屈な性格で滅多に本音を話さないとされていたハイロの心の内は知るよしもありません。でも、今日、突然の訃報に触れて、私はふと彼の心の中には常に故郷に対する愛情と喪失感があったのではないかなと思いました。
さようなら、ハイロ・バレーラ。たくさんのすてきなサルサをありがとう。
*1:ただしチョコーの名曲“Atrateño”は1983年に録音しています。